※Murder For Twoのネタバレを含みます
※全部個人の覚書
今日のマチネを観劇しながらダーリア・ホイットニーについて考えていた。
「ついに透明人間じゃないわ」
おそらくM19『Steppin' Out of the Shadows / 影から飛び出して』で繰り返し歌われるこのフレーズは彼女が夫のアーサー・ホイットニーと結婚して以降「影の中に閉じ込められた」生活から解放される自由さがよく表れていた。
彼女は子どものころは駄菓子屋に石を投げこむなどおそらく自由奔放だったのだと思う。それからパイ作りコンテストで市販のケーキを使用するというおちゃめな一面も。
ダンサー(?)としての彼女がどのようなキャリアを積んでいたのかはわからないが、(たしか)バスを降りたところでアーサーに見初められ顔が好き、凛々しい眉毛が好きだと言われコンプレックスが消えた彼女、それでも結婚してからは「影の中に閉じ込められた」と言いつつ紅茶の葉は自宅で育てた茶葉を使用するなど家庭的な面もうかがえる。(ドクター・グリフ以外紅茶を飲んではくれなかったが)
愛する(おそらく彼女なりに愛していたのであろう)夫の誕生日パーティーで夫は殺されてしまったわけだが、「影の中に閉じ込められた」日々においても人質解放講座やフランス語講座を受講して紅茶の茶葉を育てていた彼女なら夫亡き後も愉快なダンスと歌で人生を謳歌してくれるだろう。
モンスターや悪女といった歌詞にも表れているが彼女は平凡さから解放されたいという願いがあったのではないだろうか。愉快な殺人事件に巻き込まれ、最終的にマーカスの刑事昇進お披露目会(だったっけ?)のオープニングアクトとして選ばれた彼女、影から解放され透明人間じゃなくなった彼女はきっと夫がいた時代よりも楽しくなるような気がしてならない。
家父長制から解放されたともいえる(もっと言うとルックスを認めてくれた夫からの解放=ルッキズムからの解放ともいえるのかもしれない)ダーリアの表情が私たちの目に生き生きとチャーミングに映るのはほかでもない坂本昌行の熱演によるものであるし、私はこの物語でダーリアを愛さずにはいられないのであった。