透明な存在の僕が行く

 

 ■日記

 新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を終えた(全身のリンパ節が痛み39.6度まで熱が上がりかなり苦しんだし今も病み上がりではある)

 3月は舞台観劇が控えているのでこれでなんとか……重症化と家族への感染を防げればいいな……。3月も感染状況やべーだろという気はするのですが、私の人生に一番影響を与えたゲームの舞台化なので優先順位が高いんですよね……。

 

 ■生殖と人生

 婚姻の目的は”自然生殖”だって国は言うんだって。だから同性婚は認められないんだって。トランスジェンダーの戸籍変更条件に「内性器の摘出」が必須とされているのに。私の友人は配偶者の精子の活動率が1%未満で妊娠は絶望的だって泣いていたのに。

 婚姻の目的は自然生殖なんだってさ。

 バイアグラには保険適用で中絶には掻爬法や吸引法が使われているのに。

 産めよ、増えよ、地に満ちよが行きわたっている国でもないのに。

 精神疾患を患って催奇性がある薬を服用している人間だってたくさんいるだろう。

 

 それでも婚姻の目的は”自然生殖”だって国は言うんだって。

 

 

 ■迷子

 大学で受けたアメリカの文化に関する講義で(おそらく教授はべつに言ってはいなかったが同性愛者であったと思う)自分のセクシャリティがわからない人間のことを「迷子」と呼ぶのだと知ってから自分のことは迷子だと思っている。女性の肉体で生まれ、女性として就職活動し、女性の服も着るし(メンズ服も着るが)私はずっと迷子のままでいる。

 異性愛者と同性愛者と両性愛者の3つに分けられるわけではない。世界はもっと多面的である。バイロマンティックでアセクシャルな人もいるし、バイキュリアスもいるし、すべてに名前がついているわけでもない。それでも自分に当てはまる名称を探してしまうのは、迷子なのが私だけではないと確認がしたいからだ。

 

 ■The View Upstairs

 以下まとまっていない感想というか個人的感情の垂れ流し。

 

 本当は直接劇場に足を運びたかったのだが、東京コロナまじやべーって感じで、国もなにも対策してくれねーし、会社も色々ありたまには出社しなきゃいけなくなっちまったし、自分の身を守るには自分で何とかするしかねえ、という感じなので泣く泣く配信で観た。配信あるだけありがたいね。

 実在の同性愛者クラブ放火事件を基にした作品なので(アップステアーズ・ラウンジ放火事件 - Wikipedia第2回 1973年ニューオリンズのゲイバー放火事件――歴史の闇に葬られた人々(執筆者:柿沼瑛子) | 翻訳ミステリー大賞シンジケート (honyakumystery.jp))、はっきりとハッピーエンドではなく結構しんどい話なのだが、とても良い作品だった。

 主人公が1973年のアップステアーズ・ラウンジにタイムスリップして始まるのだが、まだ病気もない、というような台詞でああそうかHIVは1983年に名前がついたのだなと思った。

 『あと10年君らも病気を知る』

 私が生きている国ではクラブは焼かれないけれど、精神科は焼かれる。女だからという理由では殺されないけれど、「幸せそうな女だから」という理由では殺されそうになる。

 物語の中でホームレスの男娼であるデールは徹底的に疎外され、(実際の犯人と断定されているわけではないが)最終的にクラブに火を点ける。

 

ーーー

 

 『27にもなって布の裁断をしててさ、ブルックリンのケツのほうにあるネズミだらけの小さな部屋も借りられないような貧乏暮らしでさ、だから実家のあるニューオーリンズに帰ってきた―! ってワケ』

 ウェス、あたしじゃん……? まあ実際のあたしは26にもなって賽の河原で石を積むような仕事をしててさ、板橋のケツのほうにあるゴキブリだらけの小さな部屋も借りられないような貧乏暮らしでさ、だから実家暮らしのパラサイトなワケなんだけど。いや、就活で北海道から上京したのになんで東京で実家暮らしなんだろうね!?(すみっコぐらし)

 タイムスリップした主人公であるウェス(平間壮一)はSNSのフォロワーは10万人いるが夢破れ(?)実家に帰ってきたファッションデザイナー(出会いはマッチングアプリでカウンセリング通い)なのだが、平間壮一さんがウェスの2020年代っぽい空虚さを演じるのが大変上手くて……めちゃくちゃいいな……となった。ウェスの台詞すごく良いんですよね。書き起こしじゃ伝わらないとは思うのだけれど、上記の台詞も平間さん演じるウェスから発されるとなんか超ウェスっていうか……本人だ……(ウェスは実在の人物ではないのでいないのだが)となる。ウェスってさ……うちらだよね……いやあ脚本も日本語訳もうまいなあ……。演出・翻訳・訳詞・振付、すべて同じ人だからぜんぶがうまく嚙み合っている気がする。

 このインタビューもとてもよかった。

『The View Upstairs』演出・市川洋二郎インタビュー:“今”を生きる人々に届けたい理由 - Musical Theater Japan

 

 配信は2/18まで観られるので気になる人は是非観てみてください。いままで知らなかったのだけれど小関くんの歌とても素敵ですね。あと阪本奨悟さんも刀剣乱舞の人ってイメージしかなかったんだけどドラァグクイーン似合う。

 平間さんが出る舞台は今後も行きたいなあと思いました。なんか歌舞くのがめちゃくちゃうまい人ですね。好きな俳優が増えると人生は豊かになるなあ……。

 まあ別に人生を豊かにしたいから観劇するわけではないのですが、ままならない人生をサヴァイブする手段として趣味は大切にしていきたいな。素敵な作品に出合えると特にそう思う。

ミュージカル「The View Upstairs -君が見た、あの日-」オフィシャルホームページ | 公演日程やチケット情報

 

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